給料の差し押さえを解除または取り下げてもらう方法は?懲戒解雇されるか?

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問題
給料の差し押さえを解除または取り下げてもらう方法は何か?
差押えを受けたら懲戒解雇されるか?

回答
1.差押え命令を解除してもらうことはできない。
しかし、債権者と協議して、借金を完済するか、弁済計画を立てて認めてもらい、
差押命令の申立てを取り下げてもらえる余地はある。
2.会社にばれることは避けられない。懲戒規定にひっかかることは、
まともな会社であればないはずだが、差押えが長く続くと、社内で差押えの事実を知る人が
増えるので、やはり早めに差押えを取り下げてもらうことが重要。


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法くん:新件の相談です。相談者は20代会社員。相談内容は、
裁判所から給料の差押命令が届いた。解除してもらうにはどうすればいいか。
会社にばれないためにはどうしたらいいか。

律さん:差押えた債権者は?

法くん:楽星カードだって。信販会社。

律さん:えっと・・・根拠法は、まず民法414条1項ね。そして民事執行法145条、151条。
145条第3項によると、会社にばれない、というのは無理ね。
差押命令は、「第三債務者」である会社にも送付されるはず。

法くん:債権者に債務を全部支払えば、解除してもらえるんじゃないかな。

律さん:裁判所の手続きだから、法律に規定があるはずね。

2項、差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。3項、差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。(民事執行法155条)

そうか。これを受けて、民事執行規則の規定があるのね。

・・・あれ、ないな。
民事執行規則136条に、差押命令の申立てが取り下げられた場合の手続きについて定めているだけね。
おかしいな・・・

SHIHO先生:個別規定になければ、どこをみるべきでしょうか?

律さん:総則規定ですね。そっか、基本的なことを忘れてた。
・・・あった。39条と40条です。

法くん:債権者に借金を完済するだけではだめで、債権者がそれを書面にして
裁判所に届けないといけないんですね。
その場合、民事執行法39条1項8号により、差押は停止されるけど、解除はされない・・・

SHIHO先生:そうですね。税金の滞納処分とは違い、差押えの解除という手続きはありません。
差押えの効力から免れる方法としては、
・今法くんが言った方法と、
・律さんが最初に指摘した、債権者が何らかの理由で差押命令の申立てを取り下げること。
あとは、
・給料の差押えを続けて、完済することですね。

律さん:差押命令が届いたっていうだけで、会社に迷惑がかかるんだから、
3番目は避けたいですよね。

法くん:会社に懲戒解雇とかされないのかな。

律さん:それは、労働法の問題ね。就業規則の、懲戒解雇事由を定めた規定を見るべきだけど、
差押をうけただけで懲戒解雇なんて、極端すぎる気がするな。
実際、給料の差押えを受けただけで懲戒処分を課しているような会社なんてあるのかな。

先生:差押えがあれば、確かにその対応で会社の事務の負担が増えます。
しかし、差押えがあったからといって、会社の名誉や体面が汚されるわけではないですし、
そのような規定がもしあれば、著しく不合理と考えられますので、無効という主張が可能でしょう。

ともあれ、相談者にはもう答えられますね。